苦境の商業施設系とホテル・宿泊系リートの現状
新型コロナウィルスにより、Jリート市場は大暴落しています。
先日の記事では、Jリート市場の分析やコロナの影響が少ないレジデンス系や物流系のリート銘柄を紹介しました。
(前記事→コロナ後に狙いたいJリート銘柄)
今回の記事では、コロナの影響が高めの商業施設系リートと、ホテル・宿泊施設系のリートを考察していきたいと思います。
商業施設系リートではテナントの退去や家賃の減額など、収益の悪化が懸念されていることから株価の戻りもなかなか進んでいません。
そして一番厳しいのはホテル・宿泊施設系リートでしょう。
4月12日現在、首都圏や大阪、兵庫、福岡などで緊急事態宣言が出されている中、ホテル・宿泊施設系のリートでは収益が半減していることが予想され株価もなかなか戻ってきていません。
緊急事態宣言が出された都市では1ヶ月は壊滅的でしょう。そして緊急事態宣言が延長される可能性、そして一旦は解除されたとしても状況次第では再び緊急事態宣言が出される可能性もあります。
ここ数ヶ月から一年以上の期間では、有効な治療薬やワクチンが開発・発見されるまで厳しい事業環境が続くことが予想されます。
そして4月11日には大阪府知事の吉村氏が国に対して、テナント賃料3ヶ月を猶予する制度の要望を出されました。この発言も商業施設系とホテル系リートには、今後のリスク要因となりそうです。
新型コロナ終息へ期待したいのは、アビガンなど効果が実証されてきている既存薬です。もし既存薬や既存のワクチンで使えるものがあれば、市場は回復するかもしれません。
そんなホテル・宿泊施設系のリート銘柄の中でも、大幅下落している銘柄を逆張りして、狙ってみるのも面白いと思います。
(合わせて読みたい→「まずはこれだけっ!J-REIT(リート)の基本」)
ホテルリート銘柄選定:逆張りのポイント
LTV(Loan to Value)「総資産有利子負債比率」を見る
LTV(Loan to Value)とは日本では「総資産有利子負債比率」と言われ、J-REITの借金比率を表す重要な指標となります。
例えば1億円の不動産を購入する際に、フルローンの1億円の借金をすると、LTVは100%とかなりハイリスクな状態と言えます。
リート銘柄を選定する上で指標としたい数字では、30%や40%では安全圏、60%を超えてくるとリスクが高まってきていると思っていいでしょう。
不動産の含み損比率の増加はリスク
各リート銘柄を選定するする際に注目したいのは、所有不動産の含み損比率です。
これは不動産の購入金額に対し、現在の査定金額が上がっているのか、下がっているのかを表す指標です。
含み益ではなく、含み損比率ですから、10%となっていれば購入金額から10%の含み益があり、例えば1億円で買った不動産でしたら、現在売却すれば9000万円という金額となり、1000万円マイナスとなってしまうということです。
よって含み損比率が高まっている銘柄は避けたほうが良いでしょう。10%や20%の含み損比率では許容範囲とも考えられますが、新型コロナの影響でこれから不動産価格が落ちてくる可能性が高まっており、各銘柄の含み損比率は必然的に上昇してくることが予想されます。
注目したいのは宿泊料金の価格帯
続いて銘柄選定で注目したいのは、まず価格帯や客層です。
高価格帯〜低価格帯、客層が日本人なのか外国人なのかなどに注目し、選定することがポイントです。
新型コロナの影響は世界中に及び、ほぼ全産業に影響を与え、経済も止まっています。株価は暴落して資産的にも含み損を抱えている投資家も多いでしょう。
コロナショック前に現金化した投資家以外の富裕層の資産でも同じくダメージを受けていると予想される中、高価格帯のホテルは敬遠される可能性があります。
もしくはホテルみずから価格を下げることで稼働率を取って行くこともできますが、どちらにしても経営的にはマイナスとなります。
一方中価格帯〜低価格帯のホテルでは、価格の下落幅は限定的となる可能性があります。
日本人客が多いか、外国人客が多いか?客層もポイントに
そして価格よりも重要なのが客層です。もしコロナが落ち着いた時に、人々の旅行や移動が始まるのは日本人によって、国内からということです。
海外旅行や国外移動が始まるのはさらに先になる可能性が高く、例えば中国人が日本に来たいと思っても、中国と日本の両国でコロナが落ち着いていなければ両国ともに渡航禁止は解除しないでしょうし、もし一旦規制を緩めて渡航許可を出したあと、再び感染が広がったりすれば政府は批判の的となるから余計に慎重となるでしょう。
国内での感染が落ち着き、国内移動が本格的に再開されると、政府は観光業界や飲食業界に対して経済対策として半額クーポンを出すなどのニュースも出てきています。
加えて日本人を主なターゲットとしているリートでは、割と早い回復や値戻りが期待できる可能性があります。
現在の下落しているタイミングで良い銘柄を仕込めるのは、またとないチャンスとなるかもしれません。
【合わせて読みたい】
(次記事→逆張りホテルリート(J-RERIT)分析)
◯ホテルリートまとめ(2020年4月現在)
・星野リゾート・リート投資法人 「A」
・森トラスト・ホテルリート投資法人 「格付けなし」
・ジャパン・ホテル・リート投資法人「A+」
・大江戸温泉リート投資法人「AA」
・インヴィンシブル投資法人「A+」
・いちごホテルリート投資法人「格付けなし」