スマートベータ運用の位置づけ
最近、人気が出てきている資産運用に、「スマートベータ運用」という手法があります。
「スマート」とは賢い、「ベータ」とは市場平均連動性(=インデックス)を意味します。
結論を言ってしまうと、アクティブ・ファンドが行う「アクティブ運用」と、インデックス・ファンドが行う「パッシブ運用」との中間という位置づけになります。
アクティブ運用は、コストは掛かりますが、利回りを追求する運用手法です。
インデックス運用とは、低コストに資産を運用し市場平均利回りを目指す手法です。
(参照→インデックス・ファンドとアクティブ・ファンドの違いとは?)
「スマートベータ運用」とは、その中間ですから、インデックス運用のメリットであるシステム化され自動的に低コストで運用されるという特徴を持ちつつ、さらに一定のルールを組み入れることで市場平均より高い利回りや、低いボラティリティでリスク減少を目指す最近人気が上がってきた投資戦略のことです。
よって、低コストなアクティブ運用であり、より利回りの良いインデックス運用とも言えるのです。
【アクティブ運用(利回り)>スマートベータ運用>インデックス運用(低コスト)】
「時価総額加重平均」をより進化させた「スマートベータ運用」
従来のインデックス運用では、時価総額(発行株式株式数×株価)によって比率が決まる「時価総額加重平均」が多く使われてきました。
「時価総額加重平均」とは、例えば日本の代表的な株価指数である、TOPIXに連動するタイプのインデックス・ファンドの場合、時価総額の高い「トヨタ」や「NTTドコモ」、「ソフトバンク」「ユニクロ」など時価総額の高い順から多く組み入れられることになります。
しかし時価総額が高いからと言って、好業績が高いとは限りません。
成長が鈍化していたり、業績が落ち込んでいる場合もあります。
時価総額に比重をおいた指数から、スマートさを加えていく運用こそ「スマートベータ運用」となります。
スマートベータ指数のテーマ・種類・タイプ
スマートベータ運用では、株価指数に連動するだけのインデックス運用に新たな指標を組み込みます。
例えば高配当の銘柄で構成する「高配当型」タイプや、売上高や利益などの業績重視の「ファンダメンタル型」、各銘柄の時価総額に関わらずにポートフォリオを等しくなるようにする「均等ウェイト型」、ポートフォリオのリスクが最小となるように分散された「最小分散型」などのタイプがあります。
他にも、「ボラティリティ(変動性)」、「流動性」、「割安度」、「モメンタム(株価の勢い)」、「クオリティ」など特定のテーマに特化したスマートベータ運用のファンドなども登場しています。
インデックス運用に、”スマート”を足してた指数を「スマートベータ指数」と呼びます。
スマートベータは基本的に各運用会社が作ります。
スマートベータ運用の「JPX日経400」とは?
日本で代表的なスマートベータ指数を使った株価指数に、「JPX日経400」があります。
「JPX日経400」は、2014年に日本経済新聞社と日本取引所グループ、東京証券取引所が共同開発し開始されました。
「JPX日経400」での銘柄の選び方ですが、資本効率を示す自己資本利益率「ROE」などを使い400銘柄を選んでいます。
その組入銘柄には、幅広い業種の中から、「ROE」の高い400銘柄が選ばれており、2020年中には組入銘柄の入れ替えも予定されています。
そして、この「JPX日経400」の株価指数に連動する投資信託やETFも増えてきています。
ETFで言えば、これらの銘柄があります。
・iシェアーズ JPX日経400ETF(1364)
1口から購入可、信託報酬0.115%(年率)、分配金は2月9日および8月9日(年2回)
・NEXT FUNDS JPX日経インデックス400連動型上場投信(1591)
1口から購入可、信託報酬0.20%(年率)、分配金は4月7日、10月7日(年2回)
「高配当タイプ」のスマートベータ銘柄(2種類)
他にも、野村アセットマネジメントが国内上場株式の中から予想配当利回りが高い70銘柄を構成銘柄と設定する「野村日本株高配当70」という株価指数に連動する、「NEXT FUNDS野村日本株高配当70連動型上場投信(1577)」などがあります。
・NEXT FUNDS野村日本株高配当70連動型上場投信(1577)
1口から購入可、信託報酬0.32%(年率)、分配金は毎年1月、4月、7月、10月の各7日(年4回)
「iシェアーズ」のブラックロックからは、 「MSCI ジャパン高配当利回り ETF」というETFが登場しており、配当利回りの高さと、配当の継続性や企業の財務体質にも着目して算出される株価指数、「MSCIジャパン高配当利回りインデックス」への連動を目指している商品が出ています。
・iシェアーズ MSCIジャパン高配当利回り ETF(1478)
1口から購入可、信託報酬0.19%(年率)、分配金は2月9日および8月9日(年2回)
「ファンダメンタルタイプ」の銘柄(1種類)
「Russell/NOMURA ファンダメンタル・プライム・インデックス」は、各銘柄のファンダメンタル指標(調整済み売上高、調整済み営業キャッシュフロー、調整済み配当金)を重視し、投資可能性を追求した指数です。その指数に連動するように作られたのが下記ETFとなります。
・NEXT FUNDS R/Nファンダメンタル・インデックス上場投信(1598)
1口から購入可、信託報酬0.30%(年率)、分配金4月7日、10月7日(年2回)
「最小分散タイプ」のスマートベータ銘柄(1種類)
「最小分散」タイプの指数には、リスク(価格変動)を最小化するように銘柄選定を行い、銘柄構成のポートフォリオ設定を行います。下記は「MSCI日本株最小分散インデックス」との連動を目指すETF(上場投資信託)です。
・iシェアーズ MSCI日本株最小分散ETF(1477)
1口から購入可、信託報酬0.19%(年率)、分配金2月9日および8月9日(年2回)
バンガードによる米国株(アメリカ株)のスマートベータ運用ETF・一覧まとめ
・低ボラティリティ「Vanguard U.S. Minimum Volati(VFMV)」
・流動性ファクター「Vanguard US Liquidity Factor(VFLQ)」
・モメンタムファクター(勢い)「Vanguard US Momentum Factor(VFMO)」
・バリューファクター「Vanguard U.S. Value Factor(VFVA)」
・Vanguard US Multifactor ETF(VFMF)※1」
・ウェリントンファンド「Vanguard Wellington Fund-Van(VFQY)※2」
※1…マルチファクターでは、モメンタム、ファンダメンタルズ、バリューの3つの要素を組み入れ、ランキング付けされ優先順位によりポートフォリオを構成されています。
※2…ヴァンガードの最古の投資信託であるウェリントンファンドで、「株式3分の2」と「債券3分の1」でのポートフォリオを組んでいます。
(参照→「インデックス・ファンドの父」バンガード・グループとは)
GPIFもスマートベータ運用を採用へ
2014年4月には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、アクティブ運用とは別枠で、スマートベータ型アクティブ運用を新たに採用しました。
GPIFの採用が、スマートベータ運用への信頼度を上げる一助にもなっています。
これから日本市場でも広がっていくことが予想されます。